お葬式のギモン

お葬式の変わった風習シリーズその1

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葬儀社のない時代のお葬式は、地域の方々の手によって行われていました。そのため、全国の統一的な方法などなく、地域性が色濃く反映されており、いまでも地域独特の風習としてその名残をとどめています。そこで今回は、全国各地に見られるお葬式の風習についてご紹介いたします。「その風習、日本全国で行われているものだと思っていた」「そんな風習があるなんて知らなかった」など、新たな発見があるかもしれません。どうぞ最後まで読み進めてみてください。

「前火葬」葬儀の前に火葬をする

現代の葬儀は、葬儀・告別式を終えたあとに火葬場に出棺して、火葬をするというのが一般的な流れです。しかし全国を見渡すと、先に火葬をして、そのあとに葬儀を行う地域があります。こうした葬儀の形式のことを「前火葬」や「遺骨葬」などと呼びます。
前火葬をする地域として挙げられるのは、東北地方で、その中でも特に青森県、岩手県、秋田県で多く見られます。その他、北関東をはじめ、全国各地に前火葬をする地域が点在しています。前火葬が行われる理由には、諸説あります。

東北地方では、そもそも故人と寄り添う通夜を数日に渡って行う慣習があったそうです。しかし、時間の経過とともに遺体が傷んでいってしまい、それを防ぐために先に火葬をしたと言われています。また、交通の便が悪い地域の場合、訃報が行きわたり、参列者が駆けつけるまでに時間がかかってしまい、その間に遺体の腐敗が進んでしまうために、先に火葬をしたという説もあります。

「当日埋葬」火葬を終えたら墓地に直行?

火葬を終えたあと、遺骨を自宅に持ち帰って一定期間お祀りする方が多いと思いますが、火葬を終えた直後に墓地に直行して、火葬当日に埋葬する地域もあります。東京や千葉、山梨などの関東地方、長野や静岡などの東海地方などが挙げられます。

日本は長らく土葬が行われていました。自宅での葬儀のあと、野辺送りと呼ばれる行列を組んで、墓地まで遺体を運び、そして土葬をしました。つまり、当時のお葬式は墓地への埋葬を持って完成されると考えられており、その名残をとどめた地域では、いまも葬儀や火葬当日に埋葬をしているものと思われます。

ただし、当日埋葬をするには、すでにお墓を持っていなければなりません。また、遺族の希望や寺院の方針などによって、実施状況はさまざまです。

「長寿銭」亡き人への紅白のお祝い

葬儀と言えば、故人をしめやかに偲ぶ儀式と思いがちですが、関東地方には、天寿を全うして亡くなられた方をお祝いする風習があります。
千葉県の「長寿銭」と呼ばれる風習は、読んで字のごとく、長寿を祝うためのものです。

5円玉の穴に紅白の紐を通したものを、「長寿」と書かれた紅白のポチ袋に入れて、会葬礼状とともに配ります。長生きした故人にあやかって、参列者にも長寿がもたらされることを願うためだとも言われています。

このような、長生きした人の葬儀をお祝いと捉える風習は他でも見られます。茨城県では「撒き銭」と呼ばれる風習が行われており、長生きした人が亡くなった場合、遺族が参列者に対して小銭を撒くのだそうです。撒き銭は宮城県でも見られます。5円玉や10円玉を白い紙に包んで、お寺や葬儀会場の前で撒くか、参列者に手渡します。撒いたり配ったりするのは小銭ばかりではありません。神奈川県では甘いものやキャラメルを参列者に配るのだそうです。

「食い別れ」豆腐を食べて故人を送り出す

東京、神奈川、埼玉などで見られる風習が「食い別れ」です。納棺に参加する家族や親族は、白いものを口にして、身体を清めるのです。納棺の儀式では、故人の身体を清め(湯灌)、白装束を着せて(旅支度)、それから棺の中に遺体を納めます。そのため、それを執り行う家族や親族も、納棺に先立って身体をきれいに清めるのです。食い別れで口にするものは、豆腐とお酒です。お皿の上に乗せられた一丁の豆腐を参列者全員で食べ分けます。その後、コップに注がれた少量の日本酒を飲んで身を清めるのです。

「念仏講」みんなで集まってお念仏

念仏講とは、全国各地で見られる民俗風習です。そもそも「講」とは地域の集まり、結社、そしてそうした集まりが行う行事や会合のことを意味します。地域の人たちが集まって念仏を唱える「念仏講」以外にも、お地蔵様に手を合わせる「地蔵講」、観音様に手を合わせる「観音講」など、日本中の各村落にさまざまな講があります。通常のお葬式は、通夜、葬儀、火葬、初七日法要など、家族や親族とお寺を中心に行われますが、このあとに地域の講の人たちを自宅に招いて、さらに故人の供養を行います。念仏とは「南無阿弥陀仏」のこと。阿弥陀如来の力を頼りに、極楽往生を願って、参列者みんなで念仏を唱えるのです。

「葬式講」地域の人たちで葬儀を手伝う

「葬式講」または「葬式組」とは、10件程度の隣近所によって作られる「隣組」や「隣保」の人たちが、葬儀の際にその儀式を助け合うことです。かつては葬具の手配、参列者のおもてなし、食事の準備など、葬儀のさまざまな面でお互いが手伝いあいました。
最近はセレモニーホールでお葬式を行うケースが増えましたが、それでも、受付や駐車場の手伝いなど、葬儀社でカバーしきれない部分を、葬式講が手伝うこともあります。長野県では、葬式講のつながりを大切に考えており、一部地域では会社の仕事よりも葬式講の出仕を優先するのが当然と考えられているそうです。

「友人形」友引でも葬儀ができるお人形

友引では葬儀を行うべきでないとされています。なぜなら、この日に葬儀をすると故人が「友を引く」ため、身の回りにまた不幸が起きるかもしれないと考えられているからです。しかし、故人に人形を添えてあげれば、友引に葬儀をしても問題ないとされています。この時に棺の中に納める人形のことを「友人形」や「友引人形」と呼びます。
布を縫い合わせたもの、木彫りのもの、こけしなど、その形状もさまざまです。最近では葬儀社が友引人形を用意してくれて、アニメをモチーフにしたものもあります。友人形は、特に大阪や京都などの近畿圏で見られる風習ですが、友引に葬儀ができるという合理性から、全国的にも認知され始めています。

「分骨」骨壺が2つ渡される⁉

兵庫県の一部の地域などでは、火葬を終えたあと、火葬場から大小2つの骨壺が渡されます。浄土真宗が盛んな兵庫県では、昔から「分骨」や「本山納骨」の風習がありました。これは、故人の遺骨を分骨し、一報を家のお墓に、もう一方を宗派の本山に納骨したのです。浄土真宗本願寺派(お西)の場合は京都の大谷本廟へ、真宗大谷派(お東)の場合は京都の大谷祖廟に納骨し、宗祖である親鸞聖人と共に眠ることができるのです。

「黄白」香典袋の水引が黄色と白色

京都や大阪などの関西地方では、香典袋の水引の色に、黄色と白色を使います。通常、香典袋の水引と言えば、黒色と白色、または双銀(銀一色)ですが、関西地方では香典袋や、その後のお供えの水引にも黄白を当然のように用います。もともと黒は、宮中で使用されていた「玉虫色」に似ていて、庶民が使うには恐れ多い色だったのだそうです。そのため、次に喪を表す色である黄色が用いられたのだと言われています。天皇のお膝元である京都や関西地方ならではの風習と言えるかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。こうして日本の各地方を見渡すと、葬儀にはいろんな地域の風習があることをお分かりいただけたかと思います。

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蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

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