お葬式のギモン

湯灌を行う意味やメリット、エンゼルケアとの違いを解説

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湯灌とは、故人の体を洗い清める、古来から行われているしきたりです。旅立ちの身支度やラストメイク、そして納棺もあわせて行われます。故人の身体がきれいになり、やつれたお顔をきれいに整えてもらえることから、湯灌を希望する人が増えています。この記事では、湯灌の意味やメリット、さらには、エンゼルケアなどの似たようなことばとの違いについて解説します。

湯灌の基本的な概要

「湯灌」とは、故人を棺に納める前に、ぬるま湯を用いて体や髪をきれいに清めることです。
まずは湯灌についての基本的な概要を押さえておきましょう。

湯灌を行う意味
湯灌は、日本の葬儀で古くから見られるしきたりです。そこにはさまざまな意味が込められていたようです。

▶新たな世界への門出の準備
ひとつには、この世界に生まれてきた赤ちゃんを産湯(たらいに張ったぬるま湯)につけるのと同じように、亡くなった方もぬるま湯できれいにして差し上げて送り出すというものです。この世界と別の世界との境界を超える際に、その身体をきれいに清めるという宗教的な理由があります。

▶生前の苦しみや煩悩を洗い流す
ぬるま湯を用いることで、故人が生前に抱えてきた苦しみや煩悩をきれいに洗い流すとも言われています。

▶死後硬直の緩和
温かいお湯によって、死後硬直する遺体がほぐれ、着せ替えや納棺がしやすい状態になります。

▶衛生的な処置
ご臨終前後の分泌物の汚れなどから遺体を清潔に保つなど、衛生的な理由もあったものと思われます。

湯灌の方法
湯灌にはいくつかの方法があります。ぬるま湯を用いて遺体の表面をきれいに拭くのに加えて、最近ではシャワーをする湯灌も増えてきました。近年では自宅ではなく病院で亡くなる人が増えたことにより、臨終直後に看護師が死後処置と清拭(エンゼルケア)をしてくれます。
しかし、ただ衛生的に遺体がきれいになればよいのではなく、湯灌という儀式を通じて家族が故人様に向き合う時間こそが大切です。そのため、清拭を終えたご遺体であっても、改めて湯灌や納棺を儀式として執り行うのが一般的です。湯灌の方法についてはのちほど詳しく解説いたします。

湯灌の参加者
基本的には家族や親族が集まって、湯灌や納棺を行います。かつては隣組など近所の人が行う例もあったようです。しかし、病院死や会館での葬儀が多い昨今では、葬儀社や湯灌師などの専門業者のスタッフが行うことが多く、遺族はそれを見守るというスタイルが一般的です。もちろん、遺族の方々がスタッフと一緒に自らの手で湯灌することも可能です。

湯灌を行うタイミング
湯灌を行うタイミングは状況によって異なります。最も多いのは、親族が集まりやすい通夜式の直前です。湯灌や納棺を終えたあとに、そのまま通夜式に臨むことができます。
また、ご遺体の状況によっては早めに納棺しておいた方がよいケースもあります。湯灌をどのタイミングで行うかは、喪主と葬儀社で話し合って決めていきます。

ラストメイク、旅支度、納棺も合わせて行われる
湯灌は、故人の顔に化粧を施す「ラストメイク(死化粧)」、旅立ちの衣服を着せる「旅支度」、故人を棺に納める「納棺」なども合わせて行われます。

湯灌の詳しい流れはのちほど解説いたします。

ご遺体をきれいするさまざまな方法

故人が息を引き取ってから葬儀を執り行うまでの間に、遺体をきれいにするためのいくつかの方法があります。それらは「湯灌」「清拭」「エンゼルケア」「エンバーミング」などと呼ばれていますが、多くの人がこれらの違いをよく把握できていません。ひとつずつ解説して参ります。

シャワー湯灌
現代においては湯灌は2つの方法があり、そのひとつが「シャワー湯灌」と呼ばれるものです。自宅や葬儀会館の部屋の中に、専用の浴槽とシャワーを運びこみ、シャンプーやボディシャンプーで遺体や頭髪をきれいに洗い流します。浴槽を持ち込むからといって、部屋の中が汚れる心配はありません。給排水装置を積んだ専用車から湯灌に用いるお湯を引き、湯灌を終えたあとは、排水することなく業者が持ち帰って処分するからです。
シャワー湯灌にかかる時間は、およそ1時間30分です。基本的には湯灌師が丁寧にご遺体をきれいにし、遺族はそれを見守ります。

古式湯灌
古式湯灌とは、布団の上に横たわるご遺体の肌を拭き清めることです。たらいに張った湯にタオルを付けて、顔、手、脛や足などの肌が出ている部分を参加者全員で拭いていきます。ここで使われるお湯は「逆さ水」と呼ばれ、通常とは異なり、先に水を入れて湯を注いで温度を調整するのが古くからのしきたりです。
また最近では、逆さ水やタオルを用いずに、葬儀社が用意するアルコールに浸した清浄綿の使用が増えています。

清拭(エンゼルケア)
清拭とは、病院の看護師などが行うご臨終直後のご遺体の死後処置のことです。看護師によるターミナルケアの一環と考えられ「エンゼルケア」とも呼ばれています。一般的には、身体をきれいに拭き清め、口腔や鼻孔などに綿詰めをし、衣服の着替えまでを行います。
病院によっては、より念入りなクレンジングやマッサージや蒸しタオルなどで顔面のこわばりをほぐし、ファンデーションやチークやリップなどを用いて化粧を施すところもあるようです。

エンバーミング
エンバーミングとは、専門資格を持った「エンバーマー」による、ご遺体の衛生保全処置のことです。血管内に滞留する血液や体液を輩出して、防腐剤などの保全液を注入することで、最大50日もの期間、保冷施設やドライアイスなどを用いることなく、ご遺体の状態を保つことができます。

シャワー湯灌の流れ

それでは、湯灌がどのような流れで行われるのか、最近人気のシャワー湯灌をもとに詳しく解説していきます。ここでは、浴槽で遺体をきれいにする「湯灌」に加えて、旅支度の着付け、化粧、納棺も含めた一連の流れをご紹介いたします。

①準備
自宅で行う場合には、給排水設備を搭載した車両で訪問し、専用の浴槽を部屋に持ち込みます。葬儀式場の場合は湯灌の設備がある部屋で行い、もしもこうした設備がない場合は湯灌車を手配します。

②スタッフによる説明
開始に先立ち、スタッフが湯灌の意味や流れなどについて説明します。

③マッサージ
遺体の死後硬直を和らげるため、全身をマッサージします。

④お清め
逆さ水で作ったぬるま湯を柄杓ですくい、湯灌師が故人の身体を丁寧に洗い流していきます。遺族の参加も可能です。湯灌の際は、柄杓を左手で持ち、足元から胸元へと、下から上に向けてお湯をかけていくのが習わしです。これも逆さ水と同じ意味があり、日常とは異なる「逆さ事」のしきたりに則ったものです。

⑤洗髪、洗顔、顔剃り
シャンプーやボディシャンプーを用いて、髪や顔をきれいに洗い、顔そりをします。頭髪にはドライヤーを当てて、きれいに整えます。

⑥シャワーで清める
シャワーで遺体全体をきれいに洗い流します。シャワーの際、故人にはタオルがかけられるので、全身が見えてしまう心配はありません。

⑦着付け
きれいになった身体に衣服を着せます。仏教のしきたりにならい、旅支度(49日間の旅のお姿)を着せる場合、手に付ける「手甲」、すね当ての「脚絆」、足に履かせる「足袋」などを家族と一緒に取り付けます。また、故人が愛用していた衣服があれば、それを着せることもできます。

⑧ラストメイク
ファンデーションやチークなどで顔の血色をよくします。また女性の場合は眉毛、目の周り、口紅など、より明るい表情になります。メイクはスタッフが行いますが、希望によりご家族の手で施すことも少なくありません。

⑨納棺
参加者全員で、遺体を抱えて、棺の中に移します。

湯灌を行うことのメリット

湯灌には次のようなメリットがあります。

闘病に苦しんだ故人をきれいにできる
晩年は、病気などで苦しまれたという方も少なくないはずです。また、ずっと病院のベッドの上にいたため、満足にお風呂に入れなかったというケースもたくさんあります。故人がきれいになることで、何よりも故人本人が喜ぶことでしょう。そして遺族の中からは、「辛かった日々が救われるような想いになった」などの声も聞かれます。故人がきれいに清められることによって、納得してその旅立ちを見届けることができることでしょう。

家族だけのゆっくりとした時間の中で故人に向き合える
通夜式や葬儀式のような式典は、厳かな雰囲気の中行われます。しかし、湯灌は家族や親族だけが集まって行うアットホームな時間です。故人がきれいになっていくさまを見届け、実際に肌に触れることによって、ゆっくりとした時間の中で故人と向き合うことができるでしょう。

いかがでしたでしょうか。湯灌についてさらに詳しく知りたい方は、まずはお気軽に私たち西田葬儀社にご相談下さい。

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蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

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