式中の作法・マナー

お通夜のあとは宿泊しなくちゃいけない?準備すべきものについても解説

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通夜式が終わり、弔問客が全員帰ったあと、家族や親族だけが式場に残り、夜通し故人に付き添います。しかし、式場への宿泊に対する考えはさまざまです。馴れない空間で一晩を過ごすことを苦痛に思う人もいる反面、故人を置いて家族だけが帰宅してもいいものかと不安に感じる人もいます。通夜の宿泊を巡って、私たちはどう考えればよいのでしょうか。この記事では、通夜のあとに式場に宿泊する理由や、宿泊する際の準備物や注意点について解説いたします。

通夜のあと、宿泊しなくちゃいけないの?

結論は、宿泊するもしないも遺族の意向次第です。宿泊して故人に夜通し付き添ってもよいですし、自宅に帰ってしっかり疲れをとっても構いません。
ただし、式場によっては、必ず家族の誰かが宿泊することや、逆に宿泊を禁止しているところなど、定めるルールが異なります。使用する式場の方針に従って対応しましょう。

通夜のあとに宿泊する理由

それでは一体、どうして通夜から葬儀にかけて一晩、遺族は式場に宿泊するようになったのでしょうか。その理由を解説いたします。

通夜とは、夜通し故人に付き添うこと
通夜とは読んで字のごとく、亡くなった人に夜通し寄り添うことを意味する言葉です。いまでこそ、葬儀・告別式の前日に行われる「通夜式」として認識されていますが、もともとは儀式の名称ではなく、最後の夜を寝ずに故人に寄り添う遺族の営みそのものを指しました。地域によっては「夜伽(よどぎ)」と呼ぶところもあるようです。

起源は殯(もがり)か?
通夜の起源は定かではありませんが、日本で古来から行われていた葬送儀礼である「殯(もがり)」ではないかという説があります。

殯とは、埋葬までの長い期間、腐敗し白骨化する遺体に寄り添うことです。古代の人たちは、外形的に変化する遺体のそばにいながらゆっくりと死を認識し、別れを惜しみ、死者の霊魂を悼んでいたと言われています。

いまでこそ、医師が死亡判定を下しますが、昔の人にとっては生と死の境界は実に曖昧で、遺体の白骨化こそが死を特定する状態だったそうです。つまり、古代の人たちにとっては、遺体への寄り添いそのものが弔いだったのです。殯の期間は、時代や地域、亡くなった人によってさまざまです。ちなみに、昭和天皇が崩御された際の殯の期間は50日間でした。現代の通夜は、この殯の風習の名残で、期間を1日だけに短縮したものと考えられるのです。

お線香の番をする
お香にはその場を清める力があると信じられています。そして亡くなったばかりの故人は、この世の存在ではないものの、まだあの世にも行けず、そのあたりをふわふわ浮いている中途半端な状態にあると考えられていました。こうした状態の故人を悪いものから守るために、お通夜の夜は家族が寝ずにお線香の番をしたという説もあります。

故人の思い出話にふける
通夜式や葬儀式などのセレモニーでは緊張を強いられます。であるだけに、通夜後の宿泊の時間は、緊張から解放された中、家族同士で故人の思い出話にふけることのできる最後の時間ともいえるでしょう。明日には白骨になってしまう故人のそばで、生前の姿や思い出を振り返ることで、亡き人とのつながりや、家族や親戚とのつながりを再確認できます。

自宅に帰ってしっかりと疲れをとる人もいる
宿泊は絶対ではありません。自宅に帰りたい方は無理せず帰宅しても構いません。翌日は葬儀・告別式、そして火葬場への移動など、長丁場となります。馴れない式場への宿泊で疲れが取れないという方も少なくないため、無理をすることなく、自身が望む方を選びましょう。

式場に宿泊する場合に必要なもの

通夜に宿泊する際、何が必要なのでしょうか。主に、葬儀に必要なもの(喪服、数珠、香典など)、宿泊に必要なもの(着替え、洗顔用品、化粧品、アメニティグッズ)、貴重品や必需品など(財布、スマートフォン、充電器など)が挙げられます。

喪服
通夜式と葬儀・告別式ともに喪服を着用して参列します。宿泊の際は着替えるため、しわが寄らないようハンガーも持参しておくと便利です。また、替えの服も忘れないようにしましょう。男性ならワイシャツや靴下、女性ならブラウスやストッキングです。

数珠
仏式の葬儀の場合、数珠は必須アイテムです。数珠の形状は宗派別に定められた本式のものがありますが、僧侶や信仰心の篤い人などでなければ、どんな宗派でも利用可能な略式数珠で構いません。貸し借りをすることなく、自分用のものを持参して葬儀に臨みましょう。

香典
僧侶に渡す香典は、袱紗に包んで準備しておきます。大金を長時間持っておくのは盗難や紛失のリスクがあるため、通夜式が終わったあと、お礼のあいさつを兼ねて手渡すのがよいでしょう。

着替え
宿泊する時は喪服から着替えます。パジャマやジャージなどの過ごしやすい格好で構いません。

アメニティグッズ
洗顔用品や化粧品などの、最低限のアメニティグッズを準備しておきます。主に次のようなものが挙げられます。

歯ブラシ
洗顔フォーム
タオル
ヘアドライヤー
整髪剤
ひげ剃り(男性)
メイク道具(女性)

現金
葬儀ではいつ何が必要になるか分かりません。数珠やネクタイを忘れてしまって、それらを購入しに走ったり、親戚や参列者に食べ物や飲み物を買ったりと、急な出費に備えて現金を用意しておきましょう。

スマホや充電器
式場に宿泊する場合、通夜と翌日の告別式や火葬場への移動など、長時間にわたって葬儀に向き合うこととなります。スマホは必須アイテムですし、充電がなくなることのないよう充電器を忘れないようにしましょう。

通夜の宿泊の注意点

通夜の宿泊にはいくつかの注意点があります。事前の確認、そしてルールやマナーの遵守が求められます。

宿泊できない式場もある
この記事の冒頭でも少し触れましたが、すべての式場で宿泊ができるわけではありません。寝ずの番は古くから日本中で行われているものですから、「泊まれて当たり前」と思い込んでいると要注意です。式場を検討する際は、宿泊の可否を確認しておきましょう。

式場によって設備の充実度が異なる
建物設備の充実度は式場によって大きく異なります。お風呂やシャワー、台所やリビングが完備したところもあれば、お風呂やシャワーもなく、畳の上に雑魚寝というところもあります。場合によってはシャワーだけのために銭湯を利用する、一度自宅に帰るというケースも少なくありません。

お線香やローソクを上げられない
夜通し付き添うことを「寝ずの番」と呼ぶくらいに、お線香やローソクの灯りを絶やさずにともすことは大切なしきたりとされていました。しかし、近年では火災の危険性を考慮して、12時間持続する「巻き線香」や、電気式のローソクを用いるなど、より安全面に配慮した形をとるところが増えています。

近隣に迷惑にならないよう気を付ける
通夜の夜、久しぶりに集まった親戚たちとついつい話が盛り上がってしまうものです。しかし、式場によっては、同一館内に複数の家族が葬儀をし、宿泊していることもありますし、式場が住宅地の中に建っているケースもあります。故人との最後の夜ですから、気持ちが昂ることもあるとは思いますが、周囲の人たちの迷惑にならない配慮が必要です。

式場に宿泊するかしないかに正解はありません。体力的に負担が大きい人は、無理をすることなく帰宅して、翌日に備えることも大切です。いずれにせよ、あとから振り返って後悔しないで頂きたいと思います。そのためには自分一人で考えず、家族や親族としっかりと話し合うのが望ましいでしょう。

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  • この記事を書いた人
蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

最後の刻も故人様らしく迎えられるように全身全霊を尽くします。

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