式中の作法・マナー

喪服の季節事情~夏と女性、葬儀の装いについて

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葬儀は季節を問わずに行われます。過ごしやすい春や秋だけでなく、気温が40度近くにまでなる夏に行われることもあれば、雪が降る寒い日に行われることもあります。今回は、この「夏と冬」の葬儀に注目をし、そのときの女性の装いについて解説していきます。

まず前提で押さえておきたい、葬儀の装いの基本

葬儀には、「準喪服」と呼ばれる喪服を着用していくのが基本です。長袖のブラックフォーマルスーツ(基本的にはスカート)に、25~50デニールの黒いストッキングを合わせます。靴と鞄は、黒くて光沢のない素材で作られたものを選びます。ヘビ革などを使ったものや、金属(金具)のついたものは使いません。ヒールの高さは3センチ~5センチくらいのものが望ましいとされています。
これを基本として、「夏と冬の葬儀の装い」について解説していきます。

【夏】女性の葬儀の服装の基本

まずは夏の服装についても見ていきましょう。

葬儀の席は露出を嫌いますから、夏でも腕が出すぎるような服装は避けるべきです。ただ、「どうしても暑いので五分丈にしたい。せめて七分丈に……」と思う人も多いことでしょう。しかし「五分丈や七分丈が許容されるか、それとも許容されないか」については、実は専門家の間でも見解が分かれています。

①五分丈でも七分丈でも、それ1枚で着てしまっても構わない
②五分丈の場合はジャケットを羽織れば良い、七分丈の場合はジャケットを着なくても良い
③五分丈でも七分丈でも構わないが、どちらであってもジャケットは脱いではいけない
④喪服の基本は長袖なので、五分丈や七分丈は用いない

これらの意見は、どれが正しい・どれが正しくないと言い切れるものではありません。その時々の気温によっても考え方は変化しますし、葬儀会社や地域によっても見解が異なるからです。新しく買い求めるのであれば、風通しの良い夏用の素材で作られた長袖の喪服を選ぶとよいでしょう。袖が長くても、素材が工夫されているのであれば、夏でも快適に過ごせます。「夏に葬儀に出席する回数が何回になるか分からない」というのであれば、レンタルで済ませるのもひとつの手です。

ストッキングについても見ていきましょう。夏場であっても、ストッキングは必須です。裸足あるいは短いソックスなどでの参加は認められていません。ただしストッキングは、冷感のものを使っても構いません。少しでも快適に過ごせるように、ひんやりした素材のものを選ぶとよいでしょう。また、スカートの丈と合わせられるのであれば、いわゆる「ひざ下ストッキング」を利用してもバッドマナーにはなりません。

【冬】女性の葬儀の服装の基本

夏の葬儀の装いについて見てきたところで、ここからは冬の葬儀の女性の服装について見ていきましょう。

まず大前提としてお話しておきたいのですが、現在はどこの葬儀式場でも暖房がきいています。お寺で行う寺院葬の場合は暖房がないこともありますが、そもそも寺院葬自体が令和の現代では非常にまれで、基本的には葬祭ホールでの挙式となります。また寺院のなかでも冷暖房を完備しているところが多く見られるので、「冬で、寺院葬で、かつそのお寺に暖房がない」という状況の葬儀に参列する可能性は極めて低いといえるでしょう。

このような現状があるため、冬場の葬儀であっても、過度に寒さを恐れる必要はありません。特に「これは夏用です」と打ち出している喪服(上記で紹介した、涼しくて風通しの良い素材で作られた喪服)以外はオールシーズン使えるようになっていますから、基本的にはこれを着用していくだけで事足ります。「少し寒くなりそうだな」というときは、ヒートテック+オールシーズンOKの喪服の組み合わせにすると、もっとも無駄がないかと思われます。ただ、「ものすごく寒い地域に住んでいる」「もともと寒さに極端に弱い」「お使いで何度も外に出ることになりそう」などのような場合は、ウール素材の喪服を選んでもよいでしょう。

冬場に欲しくなる「コート」について考えていきましょう。葬儀の装いといえば「黒」であり、現在も葬儀用(フォーマル用)の黒いコートが販売されています。ただ、コートはそれほど安いものではないので、わざわざ葬儀のためだけに買い求めるのも……とちゅうちょする人も多いかと思われます。しかし、わざわざ葬儀用のコートを買い求める必要はありません。現在の葬儀会社は多くの場合クロークを用意しており、冬場はこのクロークでコートを預かるようにしているからです。また出棺のお見送りのときも、コートは着用せずに送ることになるケースが多いので、気にする必要はないでしょう。ただ、派手な色(真っ赤なものなど)は避けるべきです。葬儀用のコートまでは必要ないものの、黒色~灰色のコートならば望ましいといえます。

ストールや手袋などの小物は、着けていっても構いません。これもよほど派手な色・派手なデザインでない限りは、マナーにそれほど厳密になる必要はないでしょう。ただし、会場に着いたら外すようにします。また出棺の際には、ストールや手袋の着用は禁止です。

しばしば話題になる「冬の葬儀の足元」について見ていきましょう。
冬であっても、基本的にはタイツはNGです。上でも述べたように、デニールは20~50のものを選ぶのが基本です。ただし、「一年を通して30以下が望ましい」「冬は60程度までならば許容される」という声もあります。また、「どんなデニールのものでも構わない。タイツも許容する」としている人もいて、専門家の間でも見解が異なっているのです。そのため、「とにかくマナーに適した格好をしたい」と考えるのであれば、冬でも20~30までのものを選ぶのがもっとも無難ではあります。

靴は、冬でもパンプスが基本です。葬儀式場は駐車場を完備しているところが非常に多いといえますし、駐車場がない葬儀式場の場合はいわゆる「駅近」にありますから、冬場でもパンプスで問題なく参列できるでしょう。ただし、非常に雪が多く積もる豪雪地帯の場合は、ブーツでも構わないとされています。駐車場はスタッフの手できちんと雪かきがされているはずですが、1~2時間の葬儀の間にまた雪が積もってしまう可能性があるからです。そのときは、黒いブーツを選びましょう。

いかがでしたか?ここまで見てきた内容から分かるように、「マナー」がもっとも問われる葬儀の場面においても、実は「正しいとされる服装」は専門家によって見解が異なります。そのどれかだけが正しく、どれかだけが間違っていると断言することは困難です。ただ、葬儀は何度もあるものではありません。そのことを踏まえれば、(体調面に問題がない限りは)「もっとも無難な装い」をしていくのが一番安全かもしれません。
なお上記で紹介したのは、あくまで「基本の装い」です。妊娠していたり、身体面に不自由があったりする場合は、上記から外れる服装であっても問題はありません。

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  • この記事を書いた人
蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

最後の刻も故人様らしく迎えられるように全身全霊を尽くします。

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