式前の作法・マナー

大切な人をお連れするために……ご遺体を搬送するときの流れ

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大切な人が亡くなったときに、まず行わなければならないのが「ご遺体の搬送」です。ここでは、ご遺体の搬送をするまでの流れと安置場所の選択肢、そしてご遺体の搬送に関する注意点について解説していきます。

病院で亡くなってから、安置までの流れ

まず、故人様をお連れするまでの流れについて見ていきましょう。

1.死亡診断書の交付
現在はほとんどの人が病院で息を引き取ります。息を引き取ったことを医師が確認、その後医師によって死亡診断書が出されます。

2.エンゼルケア
看護師によるエンゼルケアが行われます。一般に病院でのエンゼルケアの場合は、「医療器具の取り外し」「清拭」「着替え」までです。ただしこのあたりは病院によって多少の違いがあり、綿詰めや保湿までを行う病院もあります。また、まったくエンゼルケアを行わない病院もあります。化粧などは伴わないのが普通です。

3.葬儀会社に連絡
故人様は一時的に病院の霊安室に移動することになりますが、霊安室は長く使えるものではありません。病院によって異なりますが、利用可能時間は長くても3時間程度が多いかと思われます。そのため、早めに葬儀会社に連絡をしなければなりません(※葬儀会社は365日24時間対応です)

4.葬儀会社到着~専用の車に故人様をお乗せする
連絡を受けた葬儀会社がすぐに専用の車を病院にまわします。その後、故人様をお乗せします。

5.安置場所へ
ご家族の希望・指示にしたがって、安置場所に移動します。その後安置場所に布団などを敷いて、故人様を安置します。宗教や葬儀会社によって違いはありますが、このときに枕飾り(一連の葬送儀礼において、一番初めに置かれる祭壇のこと。サイズは小さく、文字通り故人様の枕元に置かれる)を行うのが普通です。

なお安置が終われば、そのまま葬儀会社と葬式の打ち合わせに入るかたちが一般的です。亡くなった(故人様を安置した)翌日に通夜、そしてさらにその翌日に葬儀・告別式が行われるケースがよく見られますが、通夜~葬儀・告別式を行う日にちについてはご家族様と宗教者(例:ご僧侶様)、葬儀会場と火葬場のスケジュールを見ながら調整していきます。そのため、通夜が行われるのが2~7日後になることもあります。

安置場所の選択肢~それぞれの気持ちに沿った場所に

上記では「安置場所へ」としましたが、この「安置場所」の選択肢は主に3つあります。

①葬祭会館に安置
②ご自宅に安置
③会館式場に安置するが、ご自宅前を通る

ひとつずつみていきましょう。

①葬祭会館に安置
現在の葬式は、そのほとんどが葬祭会館(葬祭ホール・葬儀ホール・葬儀会館ともいう)で行われています。葬祭会館は葬式を行うことに特化した建物であり、故人様を安置する場所も設けられています。また、ここに安置すれば、通夜や葬儀・告別式も同じ会場で行うことができます。移動の手間を少なくできるうえ、「広さ」の制限もないので、名古屋近郊ではこの方式が一般的です。利便性を考えるのであれば、この方法が一番に挙げられるでしょう。

②ご自宅に安置
病院を出た後、葬祭会館ではなくご自宅に安置する方法です。自宅で葬儀を行う「自宅葬」ではなく、葬祭会館で葬式を行う場合でも、この方法を選択することはできます。「故人が自宅に帰りたがっていた」「慣れた自宅から送り出したい」という気持ちに寄り添うことができる方式であるため、心情的な面からこの方法を選択するご家族も多くいます。
ただこの方法の場合は、ご自宅に故人様を安置できるスペース(和室が望ましい)があることが必要です。また、マンションなどの高層階やご自宅に至るまでの道が非常に細い場合などは、この方法が選べないこともあります。なお、地方ではこの方式もよくとられます。

③葬祭会館に安置するが、ご自宅前を通る
「自宅には安置するスペースはないけれど、故人の帰りたがっていた自宅を一目見せてあげたい」「マンションの高層階に住んでいてエレベーターに故人を乗せることが難しいため、家で安置することはできないが、どうにかして思い出の場所に連れていきたい」と考えている場合は、「安置場所は葬祭会館にするが、葬祭会館に行く前に自宅の前を通る」というやり方を選ぶとよいでしょう。
故人様に車から降りていただくことはできませんが、「思い出の我が家」の景色を見ていただくことができます。

少し上でも触れましたが、「どの安置場所を選ぶか(どの方法を選ぶか)」は、地域によってある程度違いが見られます。ただどの地域であっても、ご家族が明確な希望を伝えれば、葬儀会社はその希望を全力で叶えようとします。「葬祭会館に連れていきたいが、その前に(自宅以外の)思い出の場所に立ち寄ってほしい」「自宅に安置したいが、スペース的にできるかどうか判断がつかないので意見を聞きたい」などのご要望があれば、なんでも葬儀会社に相談してみてください。また、どの安置方法であっても、そこには良い・悪いは存在しません。

注意! ご遺体の搬送は専門業者にお任せください


SNSなどで、「葬儀にかかる料金は高い。故人を連れていくのも安置するのも、自分たちでできるはず。葬儀会社の手を借りなければ安く済む」

という意見を見たことのある人もいるかもしれません。たしかにこれは一面の真実ではあります。実は「ご遺体を自家用車で運んではならない」という法律的な決まりはありません。業務としてご遺体を搬送する場合は国土交通大臣による「一般貨物自動車運送事業」の許可を得なければならないため、タクシーではご遺体を搬送することはできませんが、自家用車はこの縛りを受けません。そのため、法律的な解釈だけで話をするのであれば、たしかに「葬儀会社を介さないでご遺体を搬送すること」は問題がないのです。ただこれは現実的ではありません。なぜなら自家用車でご遺体を搬送する場合には、以下の3つのリスクがあるからです。

●感染症のリスク
●ご遺体が傷つく可能性がある
●そもそも個人では火葬までを完了することが極めて困難

ひとつずつ解説していきます。

感染症のリスク
人は亡くなると、さまざまな穴から体液が流れ出ることになります。これを適切に処理をするのは個人では難しいものですし、人が亡くなると細菌類は一気に急増殖します。このため、感染症のリスクが著しく高くなります。

ご遺体が傷つく可能性がある
亡くなった人の皮ふは非常にもろいものです。また生きている人とは異なり、自分で姿勢を維持することができません。そのためちょっとした道のでこぼこやカーブでも体が傷つきやすい状態にあります。

そもそも個人では火葬までを完了することが極めて困難
一番大きな注意点として、「そもそも個人では火葬までを完了することが極めて困難である」という点が挙げられます。葬儀会社を介さない場合は自分たちだけで書類手続きや棺・骨壺の手配などの一切を行わなければなりません。これらは知識のない人にとっては非常に大変なものです。また金沢市などのように一部の市では「書類と棺と骨壺と車さえ用意すれば個人からの依頼でも火葬を受け付ける」としていますが、このような市はほんの一部です。西尾市などのように、「そもそも火葬の申し込みは、葬儀会社を介さなければ受け付けない」としているところが圧倒的に多いといえます。

このような状況にあるため、「個人でご遺体を搬送~火葬までを行うこと」は現実的とはいえません。火葬式(直葬)を選択すれば、葬儀会社を介しても比較的安価でお見送りができますから、大切な人が亡くなった場合はまず葬儀会社に連絡をしてください。

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  • この記事を書いた人
蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

最後の刻も故人様らしく迎えられるように全身全霊を尽くします。

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