お葬式のギモン

左前・右前とは? 死装束はなぜ左前?

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着物の着方には、右前と左前の2種類あります。
日本では着物は一般的に右前に着るのが正しく、左前に着るのはタブーとされています。
ではなぜ左前で着るのがいけないのでしょうか。
そちらを解説します。

動画ではこちら。

左前は死装束の着方

お葬式の場面では死装束をお着せします。
死装束をお着せする際にいろいろと決まりがあり、
その中の一つが、左前です。

右前・左前とは?

右前・左前の「前」とは、手前側のことです。

よって右前とは右側が自分側に来ることを意味し、左前はその逆です。
自分から見た場合と相手から見た場合で逆になるので紛らわしいですが、
簡単な覚え方としては
①右手が袂に入りやすい
②相手側から見た時に小文字の「y」に見えるようにする
こちらの2つを意識すると正しく着ることができます。

死装束が左前なのは主に3つの説があります。

説1:逆さごと

死後の世界では、現世とは逆のことを行います。
この習慣を「逆さごと」と言い、逆さごとをすることによって
魔除けになると言われています。
逆さごとの例としては
夜干し

故人様が使っていたお布団は、昼ではなく夜に干します。

逆さ屏風

故人様の枕元に屏風を立てるときは、上下逆さまにします。

逆さ水

お湯の温度調整をする際、通常は温かいお湯に冷たい水を追加しますが、
故人様のお身体を清める「湯灌の儀」のときは冷たい水に温かいお湯を追加します。

これらの逆さごとのように
通常は右前の着物を、故人様はその逆の左前に着るというのが理由です。

説2:奪衣婆

仏教の考えによると、三途の川を渡った後に出会うのは奪衣婆(だつえば)です。
奪衣婆はその名のごとく衣服をはぎ取ってくるお婆ちゃんのことで、そのはぎ取った衣服を、木の枝に掛ける役割を持つ懸衣翁(けんえおう)に渡します。
その衣服の重みによって生じた木の枝のしなり具合から、生前の盗みについて裁かれます。
その奪衣婆から衣服を取られないためのおまじないが一説では「左前」と言われています。

説3:左前を尊ぶ考え方

日本で着物が一般的に右前になったのは、719年の「右衽(みぎまえ)の令」からです。それ以前の古墳時代に描かれた壁画の女性や、人物の埴輪は左前に着物を着ています。
なぜ左と右で入れ替わっているかというと、中国の影響を受けています。古墳時代に中国から文化が伝わった際は、中国の着物の着方は左前が一般的でした。
その後中国では蛮族の着物の着方が左前だったことから、左前を卑しむ風潮が起こり、次第に右前が広まっていきました。
日本では高貴な人が左前、一般の人が右前で着ていたときもあり、
故人様は神仏に尊い存在であることから、

高貴な人の着物の着せ方の左前に死装束をお着せする

という習慣ができたと言われています。

いかがだったでしょうか。
袂の左右の違いから、日本の死生観の考え方や故人様への思いも含まれています。
意味を知ると着物を着るときは右前で間違えにくくなると思いますし、
最近ではスマホで写真を撮った際に、左右反転してしまうこともありますので
着物の写真をSNSなどにアップするときは注意してください。

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蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

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