式後の作法・マナー

故人の銀行口座が凍結? 解除するにはどうすればいい?

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銀行などの金融機関は、口座の名義人の死亡の事実を確認すると、その口座を凍結し、入出金できないようにします。しかし、葬儀を終えた遺族の中には、葬儀費用やその後に必要なお金として故人の貯金を目当てにしている人も少なくありません。
この記事では、どうして銀行は口座を凍結するのか、凍結された口座をどのように解除すればいいのか、事前にお金を準備しておく方法など、分かりやすく解説いたします。

銀行が口座を凍結するタイミング

「口座を凍結する」というのは、その口座での入出金や取引ができなくなることを意味します。

まずは、どの段階で口座が使えなくなるのかを押さえておきましょう。
最も多いパターンは、遺族が口座から多額のお金を引き出そうとした時だと言われています。ATMでのお金の引き出しには、50万円や100万円など、限度額が設定されています。葬儀や、その後の支払いには多額な費用が必要となるため、限度額以上のお金を引き出すには窓口に出向かなければなりません。

「すみません。300万円ほどお金を引き出したいのですが…」
「どのようなご用件でご利用になるのですか?」
「父が亡くなって、葬儀費用やその後のもろもろの支払いに充てたいのです」
「失礼ですが、お客様はこの口座のご契約者さまご本人でいらっしゃいますか?」
「いえ、私は息子で、この口座の名義人である父が亡くなったのです」

このような形で、実は遺族の口から死亡の事実が語られることが最も多いのだと言われています。
その他にも、故人が著名な人で、人づてや報道などで死亡の事実を知ることもあるようです。いずれにせよ、死亡の事実を知った段階で、銀行はその人の口座を凍結します。

どうして口座を凍結するの?

銀行は、どうして故人の口座を凍結するのでしょうか。
預貯金などの財産は、所有者が死亡するとただちに「遺産」となるからです。遺産は法定相続人にきちんと分割相続しなければなりません。銀行の責任として、遺産をきちんと守らなければなりませんし、誰か一人に対してだけ出金することで、他の相続人から抗議を受け、トラブルにつながりかねないのです。

死亡前後の預貯金の引き出しは要注意!

しかし、実際には故人の口座を共有している家族がいるというケースは充分に考えられます。たとえば、配偶者や子どもたちが、高齢者となった本人に代わって口座の管理をすることはよくあることです。ATMから引き出すと、銀行に知られることなく故人のお金を引き出せますが、実はその行為すら、遺産の横領を疑われ、のちのちの相続手続きでトラブルの一端になる可能性を秘めています。
ですから、死亡前後の預貯金の引き出しには充分注意しましょう。何のためにお金を引き出したのかをきちんと説明できるようにしておきましょう。もうすでに引き出したお金で支払いを済ませてしまったのであれば、レシートや領収書を保管しておきましょう。

口座が凍結すると自動引き落としもできない

自動引き落としで支払いをしているものがあれば、こちらも速やかな対応が求められます。電気、ガス、水道、その他のもろもろの支払いが滞ると、それらを享受できなくなります。
なるべく早く専用窓口に連絡して、名義変更や登録口座の変更を行いましょう。

凍結解除の方法と必要書類

凍結された口座を解除するためには、次に挙げる書類を銀行に提出しなければなりません。そのためには、さまざまな戸籍の書類、そして法定相続人の同意や署名捺印などが必要となります。
遺言書がある場合、遺産分割協議がある場合など、詳しく解説していきます。

公正証書遺言書がある場合
もしも故人が生前に遺言書を残しておけば、そこに記されている遺志が尊重されます。

公正証書遺言とは、公証役場にて公証人が作成する遺言書です。作成には手数料がかかりますが、公証人が作成し、立会人も2人以上いるため、無効になりにくく、家庭裁判所による検認手続きが不要です。

公正証書遺言がある場合の必要書類は以下の通りです。

●公正証書遺言書の副本(正本は公証役場が保管)
●故人の戸籍謄本または改製原戸籍謄本または除籍謄本
●すべての相続人の戸籍謄本
●すべての相続人の印鑑登録証明書
●相続の対象となる預金取引の通帳やキャッシュカードなど

自筆証書遺言書がある場合

自筆遺言証書とは、自分自身で作成する遺言書です。いつでも気軽に自分で書ける反面、それが本当に本人の手によるものか、家庭裁判所の検認手続きが必要となり、一か月近くの時間を要します。

自筆証書遺言がある場合の必要書類は以下の通りです。

●自筆証書遺言書の正本
●家庭裁判所による検認調書または検認証明書
●故人の戸籍謄本または改製原戸籍謄本または除籍謄本
●すべての相続人の戸籍謄本
●すべての相続人の印鑑登録証明書
●相続の対象となる預金取引の通帳やキャッシュカードなど

遺産分割協議が行われる場合

遺産分割協議とは、相続人の誰かが遺産分割を提案し、他の相続人全員が同意した場合に行われる協議です。故人の遺産が多い場合、相続人全員で遺産分割について協議することが多いようです。

協議で決まった内容はきちんと書面に明記して銀行に提出しなければなりません。遺産分割の内容、協議の日付、法定相続人全員の署名・捺印などが必要となります。遺産分割協議を行った場合の必要書類は以下の通りです。

●遺産分割協議書(協議内容が書かれ、相続人全員が自筆署名と捺印したもの)
●故人の戸籍謄本または改製原戸籍謄本または除籍謄本
●すべての相続人の戸籍謄本
●すべての相続人全員の印鑑登録証明書
●相続の対象となる預金取引の通帳やキャッシュカードなど

このように、口座の凍結解除のために必要な書類を見ていると、相続人全員が故人の口座の存在を認め、同意しなければならないことが分かります。
ここに挙げたのはあくまでも一般的な事例です。金融機関やさまざまな状況などにより、さらに必要なものが生じてくるかもしれません。詳しくは個別に金融機関に問い合わせてみて下さい。

【必見!】凍結口座の仮払い制度

ここまで読んでいただくと、

「口座の凍結って大変だな」
「本人の預貯金はあてにできないな」

…と考えてしまいそうですが、朗報です。
というのも、2019年7月より民法が改正され、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(仮払い制度)が施行されているのです。これにより、一定の金額の範囲内であれば、他の相続人の承認がなくとも、相続人単独で故人の預貯金の一部を引き出せるようになったのです。

仮払い制度で引き出せる金額
引き出せる金額は以下の通りです。

【預貯金残高×3分の1×その相続人の法定相続分】
たとえば、故人の配偶者と子が1人いるとして、配偶者が故人の貯金600万円を引き出す場合を考えてみましょう。

配偶者の法定相続分は2分の1です。すると、口座に残っている600万円の中から引き出せる金額は以下の通りです。
【600万円×3分の1×2分の1=100万円】

このように、100万円までは仮払いしてもらえることとなるのです。

仮払い制度の注意点
仮払い制度の注意点は以下の通りです。

上限金額は150万円
口座の中に多額のお金が残されていたとしても、引き出せる金額は150万円が上限です。

遺産の一部を先に受け取ったこととなる
仮払い制度を利用してお金を引き出すことは、そのまま遺産の一部を先に受け取ったことになります。遺産分割協議の時にはもちろんこの金額が差し引かれて計算されます。

「単独承認」を認めたこととなる
仮払い制度でお金を引き出すことは、預貯金以外のすべてのプラスの財産とマイナスの財産を相続する「単独相続」を承認したことを意味します。もしも故人様が負債を抱えていた場合などは充分に注意しましょう。

ここまで、銀行口座の凍結について解説して参りました。遺産は法律に則って相続されるべきものであるため、銀行側は凍結をして遺産を守ること、凍結解除にはさまざまな書類の準備が必要となること、そして、一時的な出費のための仮払い制度があることをお分かりいただけたかと思います。
お葬式のお金にまつわる素朴な疑問などありましたら、どうぞお気軽に西田葬儀社までご相談下さい。

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  • この記事を書いた人
蜷川 顕太郎

蜷川 顕太郎

最後の刻も故人様らしく迎えられるように全身全霊を尽くします。

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