自分の宗派が分からないときはどうするか、その確認方法や見分け方など

葬儀を行う時には、自身の宗派を把握して、僧侶を呼ばなければなりません。しかし、中には自身の家がどの宗派に属しているのか分からずに困っている方も少なからずいます。
 
この記事では、宗派が分からない時の確認方法や見分け方について解説いたします。

宗派が分からないと何が困るのか

宗派が分からないまま葬儀をしてしまうことで、どんな弊害がもたらされるのでしょうか。

宗派によって供養の方法や戒名の形式が変わる

宗派によって供養の儀礼や作法が異なります。
 
仏教では、お経の読み方や供え物、法要の進行など、宗派によって細かな違いがあります。また、故人に授けられる戒名の形式も宗派によって変わります。例えば、戒名は6文字や9文字などで表されますが、浄土真宗では「釋〇〇」の3文字であったり、真言宗では大日如来を表す梵字「ア」が頭についたりなどの差があります。
 
したがって家の宗派が分からないと、故人にふさわしい葬儀を行うことが難しくなります。

親戚などから苦言を呈される

違う宗派で葬儀を行ってしまった場合、あとから親戚や知人から苦言を呈されることがあります。
 
「うちの家系は〇〇宗なのに」
「ご先祖様と異なる宗派になってしまっているよ」
 
などと、苦言を呈されるだけでなく、それが原因で親族間に不和が生じるかもしれません。

お墓に埋葬できないかもしれない

後日お墓に埋葬しようとしても、そのお寺と異なる宗派で葬儀をしているため、埋葬を受け付けてもらえないことがあります。
 
日本の仏教寺院は、基本的に特定の宗派に所属しており、その宗派の戒律や教えに基づいて埋葬を行います。また、お寺のお墓は、そのお寺の檀家向けに作られていることが多いため、他の宗派で戒名を授かった方の埋葬が拒まれる可能性があるのです。
 
この場合、遺族はその宗派の儀礼に合わせて、再度法事を行い、戒名を授かる必要があるかもしれません。これは、遺族にとって経済的負担や精神的ストレスとなることが考えられます。

宗派の調べ方

それでは、宗派の調べ方について詳しく解説していきます。まず家族ができることに、次の4つが挙げられます。

お寺に訊く

もしも、先祖代々を供養してくれているお寺が分かるのであれば、お寺に直接聞いてみましょう。すぐに教えてくれるでしょう。

親戚に訊く

お寺がどこか分からない、あるいはお寺に聞きづらいという方は親戚に訊ねてみましょう。
親戚でも、特にお寺付き合いが多そうな方、本家にあたる方に訊いてみると、なおのこと間違いがないでしょう。

仏壇を見る

仏壇を見ることで宗派を特定できるかもしれません。見るべきポイントは、仏壇の一番上段に祀られている仏さまのお姿です。宗派によって祀られるべき仏さまが決まっており、これで判断できるでしょう。また、引き出しの中に納められているお寺からの郵送物なども確認しておきましょう。

位牌を見る

位牌には戒名が彫刻されます。戒名も宗派によって異なるので、その特徴を確認しましょう。

お墓を見る

お墓の正面文字や、そこに彫られているご先祖様の戒名で宗派を探り当てることができます。

宗派別の特徴

宗派の調べ方として、仏壇を見る、位牌を見る、お墓を見る、というものがありました。
 
では、宗派別にどのような特徴があるのでしょうか。日本を代表する各宗派ごとに、その特徴をお伝えします。宗派の見極めポイントの参考にして下さい。

天台宗

天台宗は、最澄を宗祖とする宗派です。

仏壇の本尊

天台宗では法華経、密教、念仏、禅など、さまざまな修行を行うため、宗派としての特定の本尊を定めていません。
 
代表的なのは、坐禅をしたお姿の、阿弥陀如来、そして釈迦如来です。
 
阿弥陀如来の場合「定印」と呼ばれる、親指を丸めて両手を重ねる手の形をしています。釈迦如来の場合は両手を仰向けに重ねて左右の親指の先を付ける「法界定印」をしています。

位牌の特徴

天台宗の場合の戒名は次の通りです。
 
男性:〇〇院△△◆◆居士(信士)
女性:〇〇院△△◆◆大姉(信女)
 
※院号(〇〇院)がない場合もあります。
※頭に、大日如来を表す梵字の「ア」を刻むこともあります。

お墓の特徴

天台宗のお墓には、とりわけその宗派を特徴づける文字の決まりはありません。
軸石の正面は「〇〇家之墓」とするところが多いようです。軸石の側面や「霊標」と呼ばれる板状の石には位牌と同じような戒名が刻まれます。

真言宗

天台宗は、空海を宗祖とする宗派です。

仏壇の本尊

真言宗では、中央に大日如来、向かって右には弘法大師空海、左には不動明王を祀ります。

位牌の特徴

真言宗の場合の戒名は次の通りです。頭に、大日如来を表す梵字の「ア」を必ず刻みます。
 
男性:(ア)〇〇院△△◆◆居士(信士)
女性:(ア)〇〇院△△◆◆大姉(信女)
 
※院号(〇〇院)がない場合もあります。

お墓の特徴

真言宗のお墓の場合、正面文字に梵字の「ア」を刻み、その下に家名を刻むことが一般的です。
「(ア)〇〇家之墓」といった具合です。また、弘法大師空海に帰依する意味の、「南無大師遍照金剛」を彫刻するケースもあります。

浄土宗

浄土宗は、法然を宗祖とする宗派です。

仏壇の本尊

浄土宗では、中央に阿弥陀如来、向かって右には善導大姉(中国で浄土教を広めた高僧)、左には法然上人(日本で浄土宗を開いた宗祖)を祀ります。
 
阿弥陀如来を本尊とする宗派は他にも天台宗や浄土真宗などがありますが、浄土宗の阿弥陀様は、立った姿で、船の形をした光背を背負っているのが特徴です。

位牌の特徴

浄土宗の場合の戒名は次の通りです。浄土宗の第5祖である良誉定慧から一字をとり、「誉」の文字が入るのが特徴です。
 
男性:(ア)〇〇院△誉◆◆居士(信士)
女性:(ア)〇〇院△誉◆◆大姉(信女)
 
※院号(〇〇院)がない場合もあります。
※「誉」が「空」になることもあります。これは、開祖・法然の正式な僧名「法然房源空」から一字をとったものです。

お墓の特徴

浄土宗のお墓の場合、正面文字に家名または「南無阿弥陀仏」を刻むことが一般的です。
また、もしも戒名に「誉」や「空」の文字が見られたら、浄土宗である可能性が高いです。

浄土真宗

浄土真宗は、親鸞を宗祖とする宗派です。10の宗派に分かれており、代表的なのが西本願寺を本山とする「本願寺派」と、東本願寺を本山とする「真宗大谷派」です。

仏壇の形状

浄土真宗の仏壇は金仏壇です(ただし、最近では金仏壇にしない家も増えています)。
もしも仏壇が金仏壇であれば、浄土真宗の可能性が高いです。
 
仏壇の形状は西と東で若干の違いがあります。代表的なものとして、以下を比較してみましょう。
 
西:屋根が一重、柱は金箔+金具
東:屋根が二重、柱は黒塗+金具、仏具に鶴と亀を彫刻した燭台

仏壇の本尊

浄土真宗の本尊は阿弥陀如来です。そして左右に絵像(右に親鸞聖人、左に蓮如上人)または名号(右に十字名号、左に九字名号)を飾ります。
 
東西の違いは阿弥陀如来の後ろに放たれる後光の数です。掛け軸の上方に向かって、西は8本、東は6本の光の筋が描かれています。

浄土真宗に位牌はない

浄土真宗では位牌を用いません。「過去帳」と呼ばれるじゃばら型の帳面にご先祖様の法名や命日などを書きます。
 
また、浄土真宗では戒名ではなく、法名を授かります。
法名の特徴は以下の通りです。
 
男性:〇〇院釋◆◆
女性:〇〇院釋◆◆
 
※院号(〇〇院)がない場合もあります。

お墓の特徴

浄土真宗のお墓の場合、正面文字「南無阿弥陀仏」や「倶会一処」を刻むことが一般的です。また、霊標には法名である「釋◆◆」の文字が刻まれます。

禅宗(臨済宗・曹洞宗)

禅宗は、坐禅を重んじる宗派です。代表的な禅宗である臨済宗は栄西、曹洞宗は道元を宗祖とします。

仏壇の本尊

禅宗では、中央に坐禅をしている釈迦如来を祀ります。左右はさまざまですが、中国で禅宗を始めたとする達磨大師や、各宗派の宗祖が祀られます。

位牌の特徴

禅宗の場合の戒名は次の通りです。
 
男性:〇〇院△△◆◆居士(信士)
女性:〇〇院△△◆◆大姉(信女)
 
※院号(〇〇院)がない場合もあります。
※曹洞宗の場合、頭に「空」の一字や、円相と呼ばれる「〇」を刻むこともあります。

お墓の特徴

禅宗のお墓の場合、正面文字に家名を刻むことが一般的です。

日蓮宗

日蓮宗は、日蓮を宗祖とする宗派です。

仏壇の本尊

中央には法華曼荼羅、向かって右に鬼子母神、左に大黒天をお祀りします。法華曼荼羅の手前に日蓮上人の仏像を置くこともあります。

位牌の特徴

日蓮宗の場合の戒名は次の通りです。頭に「妙法」の文字が刻み、男性だと「日」、女性だと「妙」の文字が入るのが特徴です。
 
男性:(妙法)〇〇院△△日◆居士(信士)
女性:(妙法)〇〇院△△妙◆大姉(信女)
 
※院号(〇〇院)がない場合もあります。

お墓の特徴

日蓮宗のお墓の場合、正面文字に「南無妙法蓮華経」、あるいは「妙法 〇〇家之墓」と刻むことが一般的です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
 
葬儀のため、法事のために、事前に宗派について知っておくことは大切ですが、それにはとどまらず、自身のルーツを探るきっかけにもなることでしょう。この記事が、あなたの宗派探しの一助となれば幸いです。

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