名古屋の葬儀担当者の触れた何某11

西田葬儀社の浅井です。

最近はご無沙汰していますが、活字に触れる事はある時期からそんなに苦ではなくなったように思います。
20代前半頃だったかな。きっかけは一冊の本でした。
今思えば、ページ数も少なく、とっつきやすい内容だったからだと思います。

10回といかないくらいは読み返しています。
市川拓司さんで「いま、会いにゆきます」
中村獅童さんと竹内結子さんで映画になり、成宮寛貴さんでドラマにもなりました。
ドラマよりも映画、映画よりも原作が好きな作品ですね。

たっくんと、ゆうじと、みおの話。
たっくんは主人公で、みおと結婚してゆうじが産まれました。
ほどなく、元々身体の弱かったみおはゆうじのお産の影響もあり亡くなります。
ですが、この世を去る直前に言い残した言葉があります
「雨の季節に帰ってくるからね」

・・・断っておきますがホラーではないっす。
有名な話だと思うのでネタバレも含みますが、
みおを亡くした後、ある雨の季節に保育園児くらいのたっくんとゆうじのもとに彼女は帰ってくるわけですね。
記憶をなくして。正確にはなくしたわけではなく、大学生のみおが未来に一時的にきてしまったわけです。
みおからしたら、大きくなったたっくんとまだ形もないゆうじがいる未来にきてしまったわけです。
まぁ、それでなんやかんや幸せに過ごすんですけど、出会いがあれば別れもあり、
みおは自分が本来生きている世界へ帰らなくてはいけなくなります。雨があがったので。

元の世界に帰ったみおには選択肢がありました。
たっくんと結ばれず、もしかしたら生き永らえられる未来と、
自分が見た未来そのままの家族を作り、若くしてこの世を去る未来と。

いや、そりゃ前者を選んだら物語にならんものですが、考えてみてください。
あなたは、自分が死ぬ時期がわかっている未来を選べますか?しかも若くして。

彼女は、みおは選びました。それでもなお、ゆうじをこの世界に迎えてあげたい。
未来から戻った彼女は、みおを待つたっくんのもとへ向かったのです。「いま、会いにゆきます」と。

私が、何度も読み返してしまうシーンがあります。
未来で過ごし、過去に、もといた世界に帰らなければいけない時、みおはたっくんとゆうじに別れを告げます。
森の葉が雨の滴りを遮る中、しゃがみこんでゆうじの目線に合わせると、彼女は言います。

「素敵な大人になってね。遠い未来、私はそれを見届けることができないけれど」

私は、例えばもう一度過去に戻れたとしても同じ出会いを、同じ失敗を、
同じ喜びをくりかえす人生を選ぶんだろうなぁ。と、ぼんやり思えることを、嬉しく思います。

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